原点、四国ツーリング 4日目

4日目。

宿の朝食には鯛の漬けまであり、追加料金から考えると随分と満足度の高い朝食だった。
今日は空腹に苦しまぬよう、しっかりと朝食を食べておく。
1人でツーリングをしていると、つい走り続けて食事のタイミングを逃すことが多い…。

日陰に停めていたボクスターのボディは夜露でびっしょりと濡れていた。
エンジンを暖気しつつ、軽く幌とボディを拭き取り、出発。

今日は愛媛に入り、西側の海岸を北上する計画だ。
昨晩は松山くらいまで行けるだろうか?と考えていた。まぁ、結果的には全く無理だったのだが…。

宿のある中村からは、R321を四万十川に沿って四万十川の河口に向かって走る。
幌が濡れているので、ルーフは閉めたまま。じっくりと暖気しつつ、のんびり走った。

今回は足摺岬はパス。
以前訪れたときは曇っていてあまり良い印象が無かったし、灯台自体もあまり格好良くない…。景色は良いんだけどね。
それに、今回は未訪問の場所を優先したかった。また機会があれば訪れるさ。

足摺岬をショートカットし、道の駅 めじかの里土佐清水へ。

ここでは鰹だしの素や芋けんぴ等、いくつかの高知土産を購入。ドライブのお供にペットボトルの土佐緑茶も購入。
ちなみに芋けんぴは全国区のお菓子だが、高知県が発祥なのは意外と知られていない?

とても綺麗な道の駅だと思ったら、今年の3月にリニューアルオープンしたばかりらしい。
お土産も豊富で海産物も取り扱っていたり、食堂も併設されていたり、いい感じ。

ちょうど隣にガソリンスタンドもあったので、給油も完了。準備万端だ。

そして訪れたのは、ほど近い竜串海岸。

こちらは「竜串ビジターセンターうみのわ」という、2020年に完成したばかりの新しい観光拠点。
隣には足摺海洋館という水族館も併設されている。
竜串海岸を観光する際は東側にも駐車場と観光案内所があるが、こちらの方が綺麗で展示物も多く駐車場も広いので、ここから歩くのが推奨。

竜串は砂岩と泥岩の層が互いに重なっていて、その層が波風によって侵食され、形成された風景だ。
竜串海岸の砂岩は、約1,700万年前に水深100mより浅い海で堆積されたと言われており、太古の地震活動の痕跡や化石も確認できるなど、地質学的に貴重な地域とのこと。
中でも、一直線上に丸みを帯びた節理が見られる”大竹小竹”と呼ばれる岩石は竜串を象徴する風景となっている。

遊歩道が整備されているが、そこそこに険しい道のりなので、スニーカーが推奨。綺麗に整備された遊歩道というより、最低限の措置だけされて歩けるようになっている、程度だ。
少し歩き始めただけで暑くなり、上着を脱いで半袖に。
今日の気温は21℃と、まさに半袖で潮風が気持ち良い最高の気候だ。11月下旬とは思えないが…。

四国の南側は、本当に海が綺麗。
透明度は沖縄の離島なんかと大して変わらないのではないだろうか?もっとも、沖縄の方がアクセスは良いかもしれないが…。

腰を下ろし、しばらく波音を聴きながら海を眺めていた。

こちらは足摺海底館という海中水族館。
今日の海は穏やかだし天気も良いのでいろいろ見られそうではあるが、またのんびりしていると行程短縮になるので通過した。

それにしても、ここら辺は見どころも多いので改めて訪れたい場所だ。

竜串海岸を離れて、引き続きR321足摺サニーロードで柏島を目指す。

このあたりが足摺サニーロードのハイライト区間。

南国感あふれる木々が茂り、海岸に沿って交通量僅少の最果てシーサイドドライブ。
半袖でのオープンドライブが最高に気持ち良くて、本当に遠く離れた南国の島にでも来たかのようだった。
この道をずっと走り続けたい気分だった。

ここ最近の関東は冷える日もあったため、念のため暖かめのダウンジャケットも持ってきたのだが、まさか半袖で汗ばむ陽気になるとは…。

下の写真は大津大橋。
この橋で標高を上げるのだが、橋からの景色もまた素晴らしい。

この先すぐに叶崎灯台という小さな岬がある。
昨日、ここで夕日を見るのも選択肢にしていた。結果的には間に合いそうになかったので諦めたが、きっと素晴らしい日没が見られる場所だろう。

サニーロードを大月まで走り、r43で柏島に向かう。この旅で訪れたいと思っていた場所の一つだ。

r43は完全2車線の快走路。
大堂トンネルという2003年に完成した長大なトンネルで山を抜けると、一切という場所に出る。
かつての旧道も残されているが、このトンネルが完成するまではかなりの狭路を山越えをしなければたどり着けなかった場所のはず。

大堂トンネルを抜けて、大堂山展望台へと向かう。

大堂山展望台へと向かう道はほとんどがすれ違いの出来ない道。
タイミング悪く、和歌山ナンバーのフォレスターと離合した。

展望台へ到着すると、アマチュア無線を楽しんでいる先客がいた。
軽く挨拶を交わし、薄っすらと汗ばむ陽気の中、展望台に足早に駆け上がった。

それはまるで、青い海に浮かんでいるかのような、幻想的な風景だった・・・

時刻は12時半。
ちょうど太陽は真上に位置し、極めて高い透明度を誇る柏島の海が、より一層美しい色彩に染められていた。

柏島は四国の南西端に位置し、ちょうど豊後水道と太平洋の境にある。
黒潮のため植物性プランクトンがあまり含まれず、大きな河川も周辺にないため、この透明度を誇っているそうだ。

それに加え、豊後水道と黒潮の流れがぶつかる海域のため、日本の海の1/3にあたる約1,000種類の魚種が生息していることから、日本有数のダイビングスポットとして知られているそうだ。

柏島の象徴的な風景でもあるいけすの中では、クロマグロの養殖が行われているとのこと。
幼魚をいけすで3年間育て、50kg程度になったものを水揚げして全国に出荷している。
「黒潮本マグロ」として全国的にも有名な養殖マグロの産地なのだ。

柏島とは反対方向を見渡すと、荒々しい断崖の大堂海岸がよく見える。
かつての旧道は、あの山脈を越えてくるのだろう。

美しい風景を記憶に刻み込み、展望台を降りた。
柏島の風景を見るために、四国へ来たのだろうか?
自分でも、この旅の目的はよくわからない…。でも、来てよかった。

その後は柏島まで一応行くものの、柏島自体には特に何も無い。
ダイビングや海水浴には最適なのだろうが、アテも無いので引き返すことにした。
僕は大堂山展望台からの景色が見られただけで、満足。

その後はR321に復帰・北上し、宿毛でR321は終点を迎える。
宿毛から先は、昨日も須崎市や四万十市で走ったR56へと再会し、愛媛県に入る。

R56は主要国道なので決して交通量が少ないわけではないが、温暖な気候の中をのんびりと街を巡りながら走るのが心地よかった。
このあたりは島々や入り組んだ半島があり様々な景色が見られるのだが、なんとなくノンストップで宇和島まで走りたい気分だった。

いくつもの街を抜けて、15時過ぎに道の駅 うわじま きさいや広場へ到着。
結局、2時間ノンストップで走っていた。

宇和島といえば僕が大好きな郷土料理「宇和島鯛めし」を食べないわけにはいかない。むしろ、このために宇和島に立ち寄ったのだ。

この道の駅の食事処は、宇和島鯛めしで有名な「かどや」「ほづみ亭」「わびすけ」の3店舗が日によって交代で担当しているとのこと。
訪れた日は「かどや」だったので、迷わず宇和島鯛めしを注文した。
かどやの宇和島鯛めしに、失敗はない。

言うまでもなく、安定の美味しさ。
よく考えなくても、地元で取れた新鮮な鯛と卵、それに醤油ベースのタレをふっくらと炊かれたご飯にかけて食べるのだから、そりゃあ美味しいに決まってる。
セットで付いてきたじゃこ天も宇和島の名物。これも文句なしに美味しかった。

食後は売店でみかんジュース2本と宇和島鯛めしのタレを購入し、お土産とした。きっと失敗のないお土産だろう。
それにしても、ボクスターのフロントトランクはどんなにお土産を買っても困ることがないのは、素晴らしいパッケージングだと改めて感じる。

さて、既に時刻は16時、日没時刻も近い。そろそろ今晩の宿を抑える必要がある。
ここから北にあるR378や佐田岬半島は明るい時間に走りたいので、考えた末に今日はこのまま宇和島に泊まることにした。宿もたくさんあるしね。

結局、松山までとか計画しつつ、宇和島で1日を終えることとなった。
まぁ、無理なのはわかっていたさ…。旅も九分が十分である。
それに、大好きな宇和島に泊まる方がずっと良い。
宇和島は失敗のない街のはずである。

宿泊地は目と鼻の先だが、まだ日没まで時間がある。

近くに見晴らしの良い場所は無いかと地図を眺めていたら、宇和島城があるじゃないか。
調べてみると天守は16時で既に閉場しているが、本丸までは17時まで入れるらしい。

そうと決まれば市営の有料駐車場に車を停め、石段を登り始めた。

本丸には健康維持のために歩いている地元のおじいさんとおばあさん、それから閉場に向けて掃除をしている清掃員のおじさんがいた。

宇和島城は現存12天守の一つで、現在のものは1666年頃に建て替えられたのだそう。
標高は74mに位置しており、かつては海に面していたらしい。
それに堀も築かれていたそうだが、現在はいずれも埋め立てられている。

正直あまりイメージは無いのだが、愛媛は城下町や宿場町などの古い街並みが結構残されている。

西陽に照らされた天守の白壁が美しく、とても印象的な時間だった。

西の方角を眺める。
かつての宇和島城から見る風景は、すぐ目の前に海が広がっていたのだろう。

日没まで見ていると閉場してゲートが閉じられてしまうため、17時になる10分前には下り始めた。
清掃員のおじさんが、のんびりと体操している地元のおばあさんにゲートが閉じられるから早く下るよう急かしていたが、おばあさんは健脚だから余裕だと言っていた。
僕ものんびりと写真を撮っていたが、何も言われなかった。
実際、僕がそれなりのペースで不規則に並ぶ石段を降りていたのだが、おばあさんに追いつかれてしまった。

何はともあれ、綺麗な夕焼けが見られた。
やはり、宇和島は失敗のない街だった。

今日の宿は宇和島駅にある。
駅前というか、駅ナカにある「JRホテルクレメント宇和島

18時以降チェックインのお得なプランとしていたため、車を停めて時間つぶしがてら、駅周辺を歩くことにした。

宇和島駅と蒸気機関車

駅前には、宇和島で最初に走ったとされる機関車の復元モニュメントが置かれていた。

駅周辺には学生の姿が多く、駅近くには市営の綺麗な学習施設もあり、勉強している学生達で賑わっていた。

少し歩くと、宇和島きさいやロードというアーケード街があった。
「きさいや」というのは「来てください」という意味で使われる、愛媛県南予地方の方言だそうだ。
その言葉通り、吸い込まれるように歩きはじめた。

時間的なこともあるのかもしれないが、その他多くの地方の商店街と同じように、シャッター街になっていた。
歩いている人もわずかで、アーケード街には懐かしい曲がスピーカーから流れていた。
明るい曲と目の前に広がる寂しげな空間とのコントラストが、より感傷的にさせた。

無心で端まで歩き、そのまま引き返した。何をするわけでもなく、ただただ歩いていた。

近くのスーパー「フジ」で夕飯を買い込み、ホテルへとチェックインした。
時刻は優に18時を回り、19時になっていた。

(続く)

  • X