欧州の想い出 「息を呑む」 -Day 10-

スイス最終日。
今夜の便でフランスに渡り、数日前に分かれた友人達と合流。翌日の便で日本へ帰国するため、実質的にはこの旅の最終日である。

物価の高いスイス、朝食はCO-OPにあるフードコート?レストラン?で済ませることにした。
なのだが、自分で取って最後に精算する”大衆食堂スタイル(?)”のため、いろいろと美味しそうなラインナップを目の前にいろいろと取ってしまい、結局2,000円をゆうに超えてしまった。

さて、この日もジュネーブ散策なのだが、少し足を伸ばす。

こちらはフランク・ミュラーの本店?
決して歴史あるメーカーではないが、独創的な機構によって一気に名ブランドに名乗りを上げた。

そしてこちらである。

一見すればただの時計台、何の記述もされていないので気付かずスルーしてしまうが、こちらはヴァシュロン・コンスタンタン創業当時の工房である。
1755年創業の世界最古の時計メーカーであるヴァシュロン・コンスタンタン、こちらの工房が建てられたのも260年以上前とのこと。
そんな建物が当たり前のように街角に存在していることに感嘆する。

ローヌ川の対岸から眺める。
実は左側の建物がヴァシュロン・コンスタンタンの本店だったはずなのだが、看板が外されていた。
移転したのか?真相はわからず・・・

さらに少し歩き、サン・ピエール大聖堂へ。

ここは塔に上ることができ、ジュネーブの街並みを一望することが出来る。

昨日ほどの快晴とはいかないまでも、素晴らしい景色だ。

旧市街は高い建物が無く、とても見晴らしが良い。

ROLEX本社

レマン湖の反対側を見ると、ひときわ目立つ緑色のガラスの建物。これがROLEXの本社だ。

さて、お次はいよいよ本日のメインイベントである、PATEK PHILIPPE MUSEUMである。

予めお伝えすると、館内は撮影禁止のため写真は無し。

まずはひっそりとした入り口の呼び鈴を鳴らすと、自動の観音扉が開く。無機質な自動ドアとは違い、人間の意思によって開く扉だ。
そして2階で受付をし、見学の際には全ての荷物や上着などをクロークに預け入れ、身軽にしてパテックの世界を楽しむように仕立て上げられている。気の利いた計らいである。

見学フロアは4階まであり、16世紀頃の作品から最近のものまで、珠宝の作品の数々が余すことなく展示されている。
そこまで知識も無く言語力も無い自分が見学しても2時間はかかる。できれば1日欲しいくらいの展示量である。
また、展示品のメンテナンスや修理をしているガラス張りの工房もあり、目の前で作業を見学することも出来る。

言うまでも無くPATEK PHILIPPEは雲上の時計である。
しかし、これまでは単に最もわかりやすい”価格”という指標でしか見れていなかった自身を恥ずべきほど、PATEKの時計は人類の文化遺産としての価値、気品と格式を持っている。
そしてそれを継承するための博物館としての存在が、PATEK PHILIPPEが単なる高級時計ブランドではないことをより一層物語っている。
私のような一庶民であれ、ここに来ればPATEKの世界を感じることが出来るのだ。
様々な時計メーカーが存在しているが、やはり王者であると感じさせるのもPATEK PHILIPPEにしかできないと、改めて強く思わされる体験だった。

素晴らしいジュネーブでの日々を過ごし、帰国のためフランスへと渡る。

到着はすっかり夜になったが、無事ホテルに到着し友人たちとも合流。
お互いそれぞれの旅の思い出を共有し合い、眠りについた。

翌日。

フランス国内は「黄色いベスト運動」というよくわからん過激なデモ活動が行われており、しかも活動日は土曜日と丸かぶり。
シャルル・ド・ゴール空港も一部活動地域になっており、旅の最後に変なものに巻き込まれてはいけないので、万全を期して大人しく帰国することにした。
空港だけのフランス滞在である(笑)

こうして僕らの学生時代を締めくくる欧州旅行と、6年間の学生生活は無事に幕を下ろした。

友人たちのお陰で、イギリス、ドイツ、スイスと巡り、素晴らしい旅行をすることができた。
やはり旅行には、計画と気の知れた友人が大切である。

“学生時代最後の卒業旅行”ということに何の意味があるのか当時はわからなかったが、この記事を執筆している3年後の今となってはなんとなくわかる気もする。
記事中ではそれぞれの風景の美しさや観光地での体験に触れているが、実際のところは学生時代を共にした友人たちと知らない街を旅するということ自体が、格別の想い出であることは言うまでもない。
この旅に限ったことではなく、学生時代の旅の数々はとても楽しく、かけがえのない想い出である。

時間に逆らうことは出来ないのが人生であるが、大人の感情と子どもの情熱を持ち続けている人間でありたいと思う。

(終)

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