北海道定点観測ツーリング 7日目

あっという間に最終日を迎えた7日目。

今日帰らなければならないというその事実で暗い気持ちになりつつ、露天風呂に入浴。
宿で朝食をいただいた後に白ひげの滝へと歩いた。

白ひげの滝は美しい。

美瑛町と言えば誰もが知ってる「青い池」なのだろうが、私は一度も見たことがない。
いや、正確には2度ほど訪れているのだが、完璧なコンディションで見られたことが無いのだ。
なのでどうやら縁がないらしく、それ以降は行かないようにしている。
偏屈なことを言ってしまえば、所詮は人工的に作られた池なわけだし、人間によって枯らされた木々の風景なわけだ。本当にそれが美しいのだろうか?
白神山地に佇む青森県の「青池」に比べたら、生命も無ければ、”青さ”も感動するほどではなかろう。
…と、これらは見られなかった者の言いがかりとでも思って聞き流して欲しい。

でも白ひげの滝は別で、こちらは地下水が自然岩の合間から勢いよく流れている、自然の風景と言っても良いだろう。
ちなみに、こういうのを「潜流瀑(せんりゅうばく)」というらしい。

いつまでも眺めていられる風景だった。

富良野で謎の12,000円の出費の後、セイコーマートへと集合。

d153、R452でシューパロ湖まで一気に走る。

毎年のように見ているシューパロ湖の荒廃した風景。
この物悲しい風景がまた、旅の終焉を迎える私の感情となんとも合致するのである。

シューパロ湖は大夕張ダムの完成の後、さらにそれを沈めるかたちでシューパロダムが完成した。
そのため、それほど渇水していなくても過去に使われていた道路や橋梁が水面上に露出するのだ。

一昨年は道が通行止めで訪れることが出来なかったシューパロダムだったが、今年はついに立ち寄ることが出来た。

堤体の高さは110mと、決して日本国内のダムとしては巨大なわけでもないのだが、その数値以上に大きく見えるのはなぜだろうか。

はじめて堤体の上から眺める夕張方面の景色は、清々しく晴れ渡っていた。

それから、わざわざシューパロダムまで来たかったのは堤体を歩きたいことの他に目的がある。

三弦橋」は、正式名称は「第一号橋梁」といい、大夕張ダム完成時に夕張森林鉄道 夕張岳線がダム湖を渡るために1958年に作られた橋梁の一つ。
「三弦トラス橋」という構造は世界的にも珍しいらしく、当時は工費削減と夕張の自然風景に合うように選ばれたとのこと。
残念ながら2014年、シューパロダム完成と共に水没したのだ。

しかしながら、渇水時期に極稀に姿を現すらしく、2019年に4年ぶり、そして今年2021年の8月・9月に再び三弦橋は上面をわずかに現した。
もちろん夕張市に縁もゆかりもなければ現役の姿を知るわけでもないのだが、水面下に沈んだこの街の歴史的建造物が再び人の目に触れるというのは、感慨深いものがあるのだ。
かつて、確かにこの水面下で生活を営んだ人たちがいる…二度と生まれ育った街を歩くことが出来ない人がいるのだ。

シューパロダムを後にし、道の駅 夕張メロードへ立ち寄る。

夕張メロンの季節は終わりつつあるが、ソフトクリームは健在。
ということで、珍しくバニラ以外のソフトクリームをいただいた。

さ、いよいよ帰るだけとなった。

西陽を浴びながら、いつもの苫小牧港を望むセイコーマートへ。

ここでセイコーマートのおにぎりの食べ納めをするのは、毎年のルーチンワークだ。

苫小牧西港フェリーターミナルへ。
乗船手続きをしてくれた太平洋フェリーの受付のお兄さんが車好きだったのか、我々の車検証を見て少しの談義をし、とても親切に対応してくれた。
我々にとっては気分が沈む帰路を担っている太平洋フェリーなのだが、逆に太平洋フェリーだからこそ最後まで旅を楽しむことが出来るのだ。

今年もいつも通り、愛用の太平洋フェリーへ・・・

苫小牧の街に手を振り、北海道とはしばしのお別れだ。
いつもと何ら変わらない苫小牧の夜景だろうが、私には哀愁を感じた。
次はいつ帰ってこられるだろうか…

太平洋フェリーのお楽しみ、ハイクオリティなディナービュッフェ。
旅の想い出話もそこそこに、大満足の最後の晩餐となった。

定刻で仙台港へ入港した太平洋フェリー きたかみ。
下船した我々は各自給油し、いつもの店で牛タンをいただき、東北道を南下した。

いつもと変わらない場所をめぐる旅。
それでも、毎年行く度に新たな感動や発見を連れてきてくれる。
結局のところ、必死になって新しい場所を探すよりも、”北海道に居る”というその事実自体が心を満たしてくれるのだろう。
だからこそ、好きな場所だけを巡る「定点観測」というのは、私にとって特別なのだ。

わずか1週間足らずでは全く不足するほどに魅力に溢れ、旅の最中に来年訪れたい場所が出てくる。
今後も時間を見つけ、訪れることになるでしょう。
人生の少しでも長い時間をこの地で過ごせるように・・・

総走行距離は2,602kmでした。

終。

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